親からの相続が「負動産」であった場合、多くの人が相続放棄を検討するでしょう。
しかし、相続放棄をしても管理責任が免れるわけではありません。特に2023年の民法改正により、管理責任の範囲が明確化されました。
本記事では、相続放棄後の管理責任について詳しく解説し、適切な対処方法を紹介します。
この記事を読むとわかること
- 相続放棄後の管理責任の詳細と2023年の民法改正点
- 相続放棄後の管理責任を負うリスクとその対策
- 負動産の有効活用方法と具体的な対処法
相続放棄しても負動産の管理責任は残るのか?
相続放棄をすれば全ての負担から解放されると考える人は多いでしょう。
しかし、負動産に関してはそう簡単にはいきません。
相続放棄後も管理責任が残る場合があるのです。
その詳細について見ていきましょう。
相続放棄後の管理責任とは?
相続放棄後も管理責任が残るとはどういうことなのでしょうか。
相続放棄をすると、その相続財産に対する権利を放棄することになります。
しかし、放棄したからといって、その財産の管理義務から解放されるわけではありません。
特に、他の相続人が相続財産を管理し始めるまでの間、放棄した相続人が管理責任を負います。
この管理責任とは、自己の財産と同じ注意をもってその財産を管理することを指します。
負動産とはどのような不動産か?
負動産とは、その所有者にとって負担となる不動産のことを指します。
例えば、使い道がなく管理費や維持費だけがかかる空き家や山林などが該当します。
こうした不動産は、そのまま所有し続けるとコストがかかり続けるため、相続放棄を検討するケースが多いです。
しかし、相続放棄をしたとしても、次の相続人が決まるまで管理責任が残ることがあります。
そのため、負動産の相続は慎重に考える必要があります。
2023年の民法改正と管理責任の明確化
2023年4月に施行された民法改正により、相続放棄後の管理責任が明確化されました。
これまでの法律では、管理責任の範囲や対象者が曖昧で、問題が多かったのです。
改正後の民法では、特に「現に占有している」者に対する管理責任が強調されました。
この改正の背景や具体的な変更点について詳しく見ていきましょう。
改正前の問題点
改正前の民法では、相続放棄後の管理責任について曖昧な点が多くありました。
例えば、相続人全員が相続放棄した場合、最後に放棄した相続人が管理責任を負うという規定がありました。
これにより、実際には管理責任を負うことが困難な状況に陥ることがありました。
また、管理責任の期間や範囲についても明確な基準がなく、トラブルの原因となっていました。
このような問題点を解消するために、民法改正が行われました。
改正後のポイント
2023年4月の民法改正により、相続放棄後の管理責任の範囲が明確化されました。
特に、「現に占有している」者に対する管理責任が明記されました。
これにより、相続放棄後も実際にその財産を管理している者が責任を負うことになります。
また、管理責任の期間についても、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまでと明確に規定されました。
この改正により、管理責任の所在がはっきりし、トラブルが減少することが期待されます。
「現に占有している」者の管理責任とは?
改正後の民法では、「現に占有している」者が管理責任を負うことが明記されました。
「現に占有している」とは、実際にその不動産を使用・管理している状態を指します。
例えば、被相続人と同居していた相続人などが該当します。
このような相続人は、相続放棄をしても、その不動産の管理責任を負わなければなりません。
次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまでの間、適切に管理する義務があります。
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相続放棄後のリスクと対策
相続放棄後も管理責任が残ることによるリスクは多岐にわたります。
管理を怠った場合には、損害賠償請求や事件に巻き込まれる可能性があります。
これらのリスクを避けるためには、適切な対策が必要です。
相続財産管理人の選任や家庭裁判所への申し立てがその一部となります。
具体的なリスクと対策について詳しく見ていきましょう。
管理を怠った場合のリスク
相続放棄後に管理を怠ると、さまざまなリスクが生じます。
例えば、空き家が放置されることで老朽化が進み、倒壊の危険性が高まります。
また、不法占拠者が住み着いたり、犯罪の温床となる可能性もあります。
さらに、隣接する住民に迷惑をかけることで、訴訟問題に発展することも考えられます。
このようなリスクを避けるためには、適切な管理が必要です。
損害賠償請求の可能性
相続放棄後も管理責任を怠った場合、損害賠償請求を受ける可能性があります。
例えば、管理不足により建物が倒壊し、第三者に被害を与えた場合です。
このような場合、管理責任を負う相続放棄者が賠償責任を負うことになります。
また、放置した不動産が原因で他人の財産に損害を与えた場合も同様です。
このようなリスクを避けるためには、適切な管理と対策が必要です。
事件に巻き込まれるリスク
相続放棄後の管理不足により、事件に巻き込まれるリスクも存在します。
例えば、放置された不動産が犯罪の拠点として利用されることがあります。
また、火災や事故が発生した場合、その責任を問われることも考えられます。
さらに、管理責任を怠ったことで共犯とみなされるリスクもあります。
このようなリスクを避けるためには、しっかりとした管理が重要です。
管理責任から解放されるための方法
相続放棄後の管理責任から解放されるためには、適切な手続きを行う必要があります。
特に、相続財産管理人の選任や家庭裁判所への申し立てが有効です。
これにより、管理責任を他の者に引き継ぐことが可能となります。
その具体的な方法と手続きについて見ていきましょう。
相続財産管理人の選任
相続財産管理人を選任することで、管理責任から解放されることができます。
相続財産管理人とは、相続財産を管理・処分するために家庭裁判所が選任する者です。
管理人が選任されると、相続放棄者の管理責任はなくなります。
この手続きを行うには、家庭裁判所に申立てをする必要があります。
申立ての際には、必要な書類を揃えて提出することが求められます。
家庭裁判所への申し立て手順
相続財産管理人の選任を申し立てるには、家庭裁判所に対して手続きを行います。
まず、相続財産管理人選任の申立書を作成し提出します。
その際、被相続人の戸籍謄本や財産に関する資料が必要です。
また、管理人候補者の住民票なども揃える必要があります。
申立て後、家庭裁判所が審査を行い、相続財産管理人が選任されます。
予納金とその負担
相続財産管理人の選任には、予納金が必要となります。
予納金とは、管理人の報酬や管理にかかる費用を賄うための金額です。
家庭裁判所が事案に応じて予納金の額を決定します。
通常、30万円から100万円程度が目安とされています。
相続財産が十分にある場合は、最終的に予納金が返還されることもあります。
負動産の活用方法
負動産を持ち続けることはコストがかかるため、活用方法を考える必要があります。
相続土地国庫帰属制度や不動産取引サイトの活用、賃貸運営などが選択肢となります。
それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、状況に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。
ここでは、負動産の具体的な活用方法について詳しく解説します。
相続土地国庫帰属制度を利用する
相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地を国に引き取ってもらう制度です。
この制度を利用することで、管理費や維持費の負担を軽減することができます。
ただし、土地を更地にする必要があるなど、厳しい条件が設定されています。
そのため、利用には費用や手間がかかることを理解しておく必要があります。
申請から国庫帰属までの期間は、半年から1年程度かかる場合があります。
不動産取引サイトの活用
不動産取引サイトを活用することで、負動産を売却することができます。
インターネットを通じて買い手と売り手をマッチングするサービスです。
資金の持ち出しが少なく、手軽に売却活動を始めることが可能です。
ただし、内見や連絡対応などの手間がかかることがあります。
また、買い手が見つかるまでに時間がかかる場合もあります。
古戸建て物件として賃貸運営
負動産を最低限のリフォームを行い、賃貸物件として活用する方法もあります。
ファミリー層などのニーズが見込める場合、賃貸収入を得ることができます。
ただし、リフォームや運営には手間と費用がかかることを覚悟する必要があります。
また、賃貸運営の知識や経験が求められるため、事前にしっかりと準備を行うことが重要です。
この方法を選ぶ際には、自らのバイタリティも重要な要素となります。
不動産業者を通じて売却する
不動産業者を通じて負動産を売却する方法もあります。
不動産仲介業者に売却活動を依頼することで、市場相場に近い価格で売却できる可能性があります。
ただし、仲介手数料が発生し、手間と時間がかかることがあります。
また、不動産買取業者に直接買い取ってもらう方法もあります。
この場合、迅速に売却できるメリットがありますが、買取価格が低くなることがあるため、注意が必要です。
まとめ 負動産の相続放棄と管理責任について
負動産の相続放棄には管理責任が伴います。
相続放棄後も管理責任を怠ると、さまざまなリスクが生じる可能性があります。
2023年の民法改正により、管理責任が明確化されました。
管理責任から解放されるためには、相続財産管理人の選任や家庭裁判所への申し立てが有効です。
負動産の活用方法も検討し、最適な対策を講じることが重要です。
記事の監修
- (有)ミユキ さいたま市で1996年創業~現在
- 不動産売買、賃貸仲介・管理、リフォーム、リノヴェーション、原状回復工事
- 保証会社未使用時の滞納家賃回収業務